千と千尋の神隠し
【 ストーリー・あらすじ 】
どこにでもいるような現代っ子の千尋は、引越しの途中で不思議な町に迷い込む。謎の少年ハクに手引きされ、八百万の神様たちが入浴しに来る「油屋」で「千」と呼ばれながら働くことになった千尋。さまざまな体験や冒険をとおして、少女は「生きる力」を取り戻していく…。
宮崎駿監督が、友人の10歳の少女に見せたいという思いから作り上げたこの「千と千尋の神隠し」。2001年夏に公開されるや、批評家筋からの高い評価と多くの観客からの支持を得て、それまでの国内映画興行記録を全て塗り替える大ヒットとなった。さらに2002年のベルリン国際映画祭でも、グランプリにあたる「金熊賞」をアニメ作品としてはじめて受賞。全世界で、大きなセンセーションを巻き起こした。
【 出演(声) 】
柊瑠美, 入野自由, 内藤剛志, 沢口靖子, 夏木マリ
【 監督 】
宮崎駿
【 感想 】
この映画「千と千尋の神隠し」をみなさんは鑑賞されたことがありますか?宮崎駿監督のスタジオジブリ作品です。日本ではもちろんのこと世界でも評価が高く。ベルリン国際映画祭では、グランプリにあたる「金熊賞」をアニメーション作品として初めて受賞した作品です。子供から大人まで楽しめる作品になっていますので、ぜひ家族でご鑑賞ください。
主要登場人物(キャラクター)の紹介
千尋(千)
10歳の少女。元の世界に戻る為に湯婆婆と契約を交わす。
名前を奪われ「千」となって湯屋「油屋」で働くことになる。
ハク
湯屋「油屋」で働いており、千尋を助けてくれた少年。
湯婆婆の弟子で魔法を学んでいる。
湯婆婆
湯屋「油屋」の経営者の老魔女。
強力な魔法を使うことができる恐ろしい存在。
カオナシ
お面をつけた黒い影のような謎の存在。
手から人が欲しがるものを自由に出すことができる。
釜爺
湯屋「油屋」の釜場でボイラーを担当している老人。
千尋に協力的で、部下にはススワタリがいる。
リン
湯屋で働いている娘で、千尋の面倒を見るようになる。
性格はサッパリしていて、優しい一面もある。
坊
湯婆婆が溺愛している子供。
巨大な体で力も強い。性格はわがまま。
青蛙
湯屋で下働きの仕事をしているカエル。
お金が大好き。
父と母
千尋のお父さんとお母さん。
勝手に料理を食べたことにより豚の姿になってしまう。
名前が「千尋」から「千」に
ある不思議な町に迷い込んでしまった千尋の家族。その町にある料理を勝手に父と母が食べてしまったことにより、父と母は豚の姿に変えられてしまうのです。こうして、千尋は湯婆婆が経営する湯屋「油屋」で働きながら、父と母を元の姿に戻すべく、そして元の世界に帰るべく物語りが始まります。
宮崎駿作品をたくさん観てきていますが、千尋はこれまでにない感じの主人公だと思います。宮崎駿作品で登場するヒロインといえば「強くたくましい」というイメージがあるのですが、千尋は普通の女の子という印象を受けました。だからこそ愛着が湧きやすいキャラクターになっていたと思いますし、「弱さ」が描かれていたからこそ応援したくなりました。
謎の少年 ハク
本作のヒーロー役で千尋を助けてくれる少年ハクですが、少し謎のある少年です。迷い込んだ千尋を助けてくれる優しい少年なのですが、どうも前々から千尋を知っていた感じを仄めかしていますし、どこかこの世界の住人ではないような謎の少年です。もちろんそれはラストまでに明らかになります。
千尋も宮崎駿作品には珍しいキャラクターですが、このハクもとっても美形でかっこよくそれまでになかったキャラクター(のちに「ハウルの動く城」で、かっこいいハウルが登場します)だなぁと思いました。ただ竜に変身することができるという設定から考えるとその風貌は自然に思えました。
湯屋「油屋」の経営者で魔法使いの湯婆婆
最初登場してきた時はびっくりしました。と~っても顔が大きく威圧感と存在感は恐ろしかったです。そして魔法が使えるということで、さらに恐ろしい存在になっていました。
あと子供の坊には極度に甘いというギャップが良かったです。それにしてもあの大きな顔で近づかれたらと考えるとほんとに恐ろしいです。本作には欠かせないキャラクターです。
カオナシ
「あっ・・・」としか話すことができない、黒い影みたいなものが仮面を被ったような姿で、不思議な雰囲気を醸し出しているカオナシ。表情も変わらないので何を考えているのかわかりません。ただ、千が困っていると千が欲しいもの(湯の札)を与えたりと、千に対して好意を抱いているのはわかります。本作で一番不思議なキャラクターです。
ただとっても大人しいカオナシが一気に凶暴になるのはびっくりしました。手から何でも出すことができる能力を活かして、欲しいものを出しては従業員を呑み込んで巨大化していき、湯婆婆にも手に負えないほど凶暴化していきます。
ただ、湯婆婆の双子の姉の銭婆のところに行った時のカオナシはとってもかわいくなっていました。カオナシのことをよく知っている銭婆だからこそなのだと思いますが、カオナシが編み物をやっている姿はとってもかわいかったです。登場してから、不思議→怖い→かわいいと印象が変わっていくキャラクターです。
+ カオナシの解説 +
調べてみるとカオナシの正体は人間の心に潜む孤独や寂しさの神みたいです。確かに孤独と寂しさに溢れていたと思います。しかし、その現状に満足していたわけではなく、自分の居場所というものを探していたのだと思います。そして千を始め多くの従業員に金を与えることで喜んでもらい、自分が必要とされることに存在意義を感じていたのだと思います。
カオナシは結局、銭婆の元で暮らすことになりました。銭婆に「あなたはここにいなさい。いろいろ手伝ってもらわないと」と言われた時のカオナシはとっても嬉しそうでした。自分が必要とされ、自分の居場所が見つかったということなのだと思います。
宮崎監督は「みんなの中にカオナシはいる」と言っています。これらを踏まえて本作を鑑賞してみると、カオナシの印象がまた違ってくるのではないかと思います。
かわいいキャラクターがいっぱい
本作は宮崎駿作品の中でも、個性的で不思議なキャラクター(登場人物)が多い作品だと思います。そしてかわいいキャラクターもたくさん登場するのでその辺りも楽しませてくれます。
まず千尋が働く湯屋「油屋」にはたくさんの神々がやってくるのですが、個性的でかわいいキャラクターばかりです。個人的には湯船に浸かっている小鳥のようなたくさんの神様が好きです。
あと釜爺のところで働いているススワタリです。見た目は「となりのトトロ」に出てきた「まっくろくろすけ」にそっくりだったので、登場してきた時は嬉しかったです。手足が生えていて石を運ぶ姿だったり、金平糖が大好物という設定もおもしろかったです。
そして湯婆婆の子供の坊と湯バードと呼ばれる湯婆婆の顔をした鳥です。はっきりいって坊は湯婆婆に過保護に育てられたというのもあってあまりいい性格ではありませんし、湯バードも決してかわいいとは思いません。
しかし、湯婆婆の双子の姉の銭婆(ぜにーば)によって、坊と湯バードがネズミとハエドリに魔法で姿を変えられてしまうんです。その後、千と共に行動を共にすることになるのですが、もうこうなってからは何をしててもかわいかったです。
千とハクの関係
千尋を助けてくれたハクには、謎がありました。それは千尋をなぜ昔から知っていたのか?ということです。それはハクがこの世界の住人ではなく、千尋と同じく元々は現実の世界にいたからです。そしてハクという名前も実際は違うということです。これらすべてはラストで明らかになります。
+ 千とハクの関係の解説 +
千とハクの間には愛が存在していたと思います。しかし、千は人間でハクは川の主、二人が恋愛関係に発展することはありません。ただハクを人間ではなく川の主ということで自然を象徴させるものと考えるのであれば、千とハクを「人間」と「自然」に置き換えることにより、関係性とそこから伝わるメッセージがわかってくるように思えます。
自分というものを忘れてしまったハクを「失われた自然」、ハクを忘れていた千尋を「自然を失った人間」と考えると、「大丈夫。本当の名を取り戻したから。元の世界に私も戻るよ。」というハクのラストの言葉の意味とその重みが伝わってくるように思えます。
といいましてもこれはあくまでも私の解釈です。実際の正解はわかりませんが、これは観た人の解釈に委ねられているということで、それぞれの解釈で正解なのだと思います。いろいろな捉え方が出来るという意味でも、楽しめる作品だと思います。
環境破壊
飽きさせないストーリーとたくさんの個性的な登場人物、とてもよくできた作品だと思います。そして、多くのジブリ作品にも込められているメッセージが、本作にもきちんと込められていて良かったです。湯屋「油屋」にやってきた大きく汚いドロドロの神様、湯屋にとって最悪なお客様なのですが、これは人間が作り上げた姿なのです。
人間が廃棄したゴミが作り上げてしまった恐ろしい神様の姿。環境破壊や自然保護のメッセージが込められています。この映画が公開された時と今とでは、また環境の現状は違っていると思います。環境破壊が進むにつれてこのシーンから受けるメッセージは大きくなるでしょう。
生きる力
- 名前を失った千尋
- 記憶を失ったハク
- 居場所を失ったカオナシ
- 自由を失った坊(湯婆婆の子供)
この映画ではたくさんの登場人物の、自分を見つける姿や新たな道に進む姿が描かれています。やはり一番は千尋で、決して失った名前を取り戻したというだけでなく、生きる力を取り戻したのだと思います。オープニングの車の後部座席でダラダラと寝転んでいた千尋ですが、ラストのトンネルをくぐる千尋の姿はまた違って見えていました。
あと千尋がラストでトンネルをくぐって現実に帰ってくるシーン、実はあのシーンはオープニングでトンネルをくぐる千尋と同じ絵を使っていたみたいです。同じ絵だというのに、オープニングとラストで千尋の表情が違って見えたのはすごいと思いました。
ほんとにたくさんのメッセージが込められている本作。そして子供でも楽しめる要素が盛りだくさんなのがすごいと思います。子供から大人まで幅広い層で楽しめ、そして観る度に映画から受けとるものがある作品です。なので、一度だけではなく何度も鑑賞して、楽しんでもらいたいです。
- Comment(6)
- [ アニメーション映画 ] スタジオジブリ 宮崎駿
野乃はパッチさんの解釈とても納得です。
あんまり深く考えないで見ていたのですが、こうやって解説していただくとなるほどと思います。
テレビで取り上げられていた時におっしゃっていたのは
「挨拶もろくにできなかった子が最後にはちゃんと挨拶したり自分で考えて行動できるようになっている。」
確かに言われてみるとオープニングの千尋とエンディングの千尋はぜんぜん違いますよね。
はじめて釜じいのところに行った時りんに言われるまでお礼言えてませんでしたもん。
なんといっていいかわからないんですが、ちょっとした困難で人って簡単に成長できるんですね。
乗り越える意思があるかないかなんだと思いました。
- 2010/05/26
- 野乃狐晴さん
こんばんは、野乃さん。
コメントありがとうございます。
私も最初は少し謎や疑問を抱えた状態だったのですが
何回か観る内に少しずつ自分なりに納得できる解釈に至りました。
人とはやはり違う新たな環境に置かれることによって
少しずつ覚えていき、成長していくものだと思います。
千尋も新たな環境に、強引に放り込まれる形であったにしろ
周りの人たちの支えもあって
ラストでトンネルをくぐった時の千尋に
また別の表情が現れていたんでしょうねっ。
困難とは誰の前にも必ず用意されているものなんだと思います。
そしてその困難を楽に乗り越えるのではなく
結果に関係なく困難を困難と感じた時に
人は成長できるのかもしれませんねっ。
野乃さんが仰る通り
困難に立ち向かう意思こそ大切なんだと思います。
いつまでもその意思を持っていたいなぁって思いました。
映画とはあくまでも人生の上での娯楽であって
ここまで深く考える必要はないかもしれませんが
このように深く考えることができるというのも映画の素晴らしさなんでしょうねっ。
そういう意味でも「千と千尋の神隠し」は素晴らしい作品だと思います。
ご訪問ありがとうございました(^^)
- 2010/05/27
- パッチさん
トトロがないのが 残念です。
親の変貌 千尋の悲しみ。カオナシの 人の心を 試すような カオナシは なにものか?
どこか 教訓めいた 昔話のような 絵本の世界というか
いい映画ですね。
- 2012/03/24
- 村石太レディ&アニメ星人さん
こんばんは、村石太レディさん。
コメントありがとうございます。
本作は日本はもちろん
海外でも評価の高い作品ですよねっ。
あと「となりのトトロ」ももちろん鑑賞済みなのですが
まだ紹介できずにいるので
また紹介できたらいいなぁと思っています。
絵本みたいなというのは納得です。
キャラクターも個性豊かですし
特にカオナシはかわいらしさもあり
好きなキャラクターです。
ご訪問ありがとうございました(^^)
- 2012/03/26
- パッチさん
確か、これは「売春婦」に重点を置いてる作品ですよね!?
やはりジブリは奥が深い。。。
- 2012/04/07
- ああ無情さん
こんばんは、ああ無情さん。
コメントありがとうございます。
本作は色々なキャラクターもいますので
とても楽しめる作品だと思います。
「売春婦」というのは全く感じませんが
素晴らしい作品だと思います。
ご訪問ありがとうございました(^^)
- 2012/04/09
- パッチさん
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