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未来世紀ブラジル

06.03

未来世紀ブラジル


 【 ストーリー・あらすじ 】

 個人情報のすみずみまで管理されている未来社会の中、情報省記録局の小役人サム(ジョナサン・プライス)は、いつも夢の世界に想いをはせることで、息詰まるようなストレスをしのいでいた。そんなある日、同僚が叩きつぶしたハエのせいでインプットのミスが起こり、靴職人のバトルがテロリストのタトル(ロバート・デ・ニーロ)と間違って捕らえられてしまうという事件が発生する…。
 管理社会を痛切に批判した、鬼才テリー・ギリアム監督によるSFファンタジーの傑作。ユニーク極まる未来社会の設定の数々に、ザビア・クガートのサンバ曲「ブラジル」が効果的に融合し、豊潤な映画のイメージとして映えわたる。

 【 出演 】
ジョナサン・プライス, ロバート・デ・ニーロ, キム・グレイスト

 【 監督 】
テリー・ギリアム



 【 感想 】

 この映画「未来世紀ブラジル」をみなさんは鑑賞されたことがありますか?1985年に公開されたSF映画です。ただ、ちょっとクセの強い作品ですので、おすすめというわけではありません。おそらく好き嫌いが分かれる作品だと思います。あとブラックユーモアも散りばめられていて、斬新且つ奇抜な映像の連続ですので、映像だけでも楽しめますし観る価値ありだと思います。クセの強い作品が好みだという方におすすめです。

斬新で奇抜な映像と世界観

 この映画の魅力というのは視覚から直接入ってきます。設定が未来ということで、変わった物や乗り物などたくさん登場してきます。しかし、どこか廃れた雰囲気が醸し出されているのもこの映画の良さだと思います。

 あとたくさんの装置みたいなものが登場してきます。自動的にトーストを焼いてくれる装置だったり、風呂のお湯を自動で溜めてくれる装置・・・など、ほんとにたくさんのヘンテコなものがあるのですが、すべてが未完成品のようでどこか不便さがあり、「ほしいようでほしくない」「デジタルのようでアナログ」といった印象を受けました。

斬新な未来

 未来の設定でありながらレトロさを感じさせる、これこそがこの映画の魅力なのだと思います。あと全編に渡って出てくる「ダクト」です。これもまた頻繁に登場してくるのですが、かなり生活に密着したものとなっています。ダクトがフル活動されている世界なんです。

 ダクトとは本来隠れて見えないようにされているのが普通ですが、映画の中では色んな色のダクトを販売していたりと、見えているのが当たり前のものとして扱われています。このダクトがまた視覚的に重要な役割を果たしており、生活に密着した便利なものの象徴として表現されていると思えば、最もジャマなもののように思えるような描写もされています。

夢の中の天使のような女性

 この「未来世紀ブラジル」の主人公である情報省記録局のサムをジョナサン・プライスが演じています。ジョナサン・プライスの出演作品をけっこう(10作品ほど)観ているにも拘らず、今まで注目したことがなかった俳優さんです。ただ、とても魅力的な俳優さんで、動きや仕草での表現がうまい俳優さんだなぁという印象を受けました。

サム

 ということで、この情報相記録局のサムですが、彼は頻繁に夢を見ます。彼はナイトのような格好をしており、背中には大きな翼を持ち、自由に空を飛んでいるんです。まぁ夢の中ですから、空を飛べてもおかしくありません。もちろん、私も翼は持っていませんでしたが自由に空を飛んだこともあります。

 ただサムは毎回同じ設定の夢を見るのです。同じ格好で空を飛び、そして毎回・・・ある女性が現れる。その女性はまるで天使のようで、そんな彼女にサムは恋をしてしまうのです。

 もちろん夢ですから、毎回同じ夢を見ることもあるでしょう。しかし、サムは現実の世界で夢の中に登場する彼女と出会ってしまうのです。夢の中で恋に落ちたサム、その女性が現実に存在するとわかれば、彼女を追いかけない理由がありません。ということで、サムは現実に存在した彼女を追いかけ始めるのです。

夢の中の女性

タトル(Tuttle)とバトル(Buttle)のタイプミス

 文章や漢字、そして名前などをタイピングミスなどはよくあることです。このブログでも・・・頻繁にあります(申し訳ありません)。ただ、この映画の中では「情報」こそがすべてで絶対なのです。なので決して間違いやミスは許されない世界なのです。しかし、あることがきっかけとなって個人情報内のスペルを書き間違えてしまい、ある事件へと発展していってしまいます。

タイプミス

 このミスは必然だったのでしょう。ハエを殺して、その死骸がタイプライターの中に入ってしまって起きたタイプミス。こんなことが起こってしまうほどいい加減な管理体制なのです。サムが働いている情報省では、数多くの社員が働いていますが、みんながみんなクラシック映画だけを楽しみに会社にやってきているように思えます。

 そして、何をするにもいくつもの書類を通さなければいけません。全てはマニュアル化されており、記録こそが重要で記録に従って成されているにも関わらず、そのマニュアルと記録の管理がハチャメチャで全く信用できない状況が、この映画をおもしろくしています。

疎かな管理体制

ダクトの修理工 タトル (ロバート・デ・ニーロ)


 あとダクトの修理工でありテロリストとして指名手配されているタトルをロバート・デ・ニーロが演じています。彼は書類を嫌っており、モグリでダクトの修理を行なっています。タトルはいきなり現れてダクトを修理し、颯爽とロープで去っていきます。ほんとにかっこいいです。出番こそ少ないですが、とっても味のある役を演じていますので存在感はバッチリです。個人的に大好きなキャラクターです。

タクト

ブラックユーモア

 この映画はコメディタッチに描かれているのですが、なんともブラックユーモアに溢れています。強く印象に残っているのは、サムの母親です。女性は常に美しくありたいと思うかもしれませんが、サムの母親の整形はやりすぎもやりすぎです。顔を揉みくちゃに揉まれて、その後にラップで顔をグルグル巻き・・・斬新過ぎる整形が行なわれます。

すごい整形

 個人的に好きだったのは、ロバート・デ・ニーロ演じるタトルが新聞紙やちり紙に覆われてしまうシーンです。風で飛ばされた新聞紙やちり紙が体に引っ付くというのは、たまに見かける光景ですが、見る見る内に体全身を覆いつくし倒れてしまうのはおもしろかったです。

 他にもいっぱいあって書ききれないのですが、全編通してブラックユーモアに溢れていますので、常に飽きずに鑑賞することができると思います。

溢れるブラックユーモア

ラスト

 ラストはどんでん返しといいますか、ある裏切りが待っているのですが、それほど驚きがあるわけではありません。というのも、やはり全編すべてがどんでん返しという感じですので、ラストまでの間に感覚がマヒしまっている感があります。

 ただ、公開当初エンディングは今のままか消費者受けの良いハッピーエンド版かというので揉めたらしいですが、結果的に今のままの皮肉たっぷりのエンディングになって良かったと思います。

妄想

映画「未来世紀ブラジル」のDVD・サントラ音楽
遊びに来てくださりコメントまで本当にありがとうございます
未来世紀ブラジルは私も大好きでギリアム版1984の感覚が残っています
小学生の時一人で劇場に見に行きラストの哀しくも美しいブラジルの名曲に涙した事を覚えています
こういったマニアックな作品は友達や親も興味無くスクリーンやロードショー読んでよく一人で毎週見に行ってました
あの頃は合理化されたシネコンではなくそれぞれの映画館独特の香りが好きでアイスクリーム売りのおじさんが休憩中に売り歩いたり同時上映やオールナイトがあったりと古き良き思い出があります
殺し~はタラちゃんマカロニベストにも入ってますがレポマンやシド&ナンシー等のオルタナティヴ監督アレックスコックスもマカロニマニアでかなり高評価してます
コルブッチ自身自分が撮ってきたマカロニで一番好きな作品です
レオーネとよく比較されるコルブッチですが美しい大作志向に走ったレオーネとは対照的にあくまでグラインドハウス的娯楽性を貫いたコルブッチはファンも多く私も大好きな監督の一人です
殺し~は娯楽を超えかなり考えさせられますが…
おそらくレンタルは無いと思いますので機会あればご覧下さい
コメント本当にありがとうございました
  • 2010/06/04
  • ラウ・チェンさん
 【ラウ・チェンさんへ】

こんばんは、ラウさん。
コメントありがとうございます。

本作を劇場で鑑賞されたということで
それも小学生の時というのはすごいと思います。
やはりクセの強い作品ですので、まだ子供の時にこの映画を楽しまれたというのはびっくりです。

昔と今とでは劇場も変わりましたが
一番は雰囲気かもしれませんねっ。
昔は、その劇場ならではの雰囲気があったと思います。

私はそれほどそのジャンルに詳しくないので
ちょっとわからないことばかりですが
ラウさんはとてもお詳しく、好きだというのは伝わってきました。

「殺しが静かにやってくる」のレンタルはないということで
また機会がありましたら鑑賞してみたいと思います。
ご訪問ありがとうございました(^^)
  • 2010/06/04
  • パッチさん
こんにちは
ブラジルのような全体主義国家を背景にした映画や小説は数多いですがジョージオーウェルの小説を映画化80年代にリメイクされたエレファントマンのジョンハート主演の徹底的にシリアスで救いの無い1984
トリュフォーの読書禁止管理国家をブラジル同様ユーモアたっぷりに描いた華氏451
スティングのジョージロイヒル監督の暗い背景なのに監督の人柄が演出に出て心暖まるスローターハウス5
そしてブラジルが私の全体主義系?のお気に入りでしょうか
幼少期からクセのある映画や芸術全般が大好きで小学6年の時第一回東京ファンタスティック映画祭の招待作品がスクリーンの付録冊子に画像付きで
紹介されていてその中に
1984やカルトムービーのエルトポやピンクフラミンゴやレポマン、死霊のしたたり、悪魔の毒々モンスター等がありその奇異な画像に惹かれ未だに大好きな映画です
かといってメジャー娯楽映画も好きで今では
ヌーヴェルバーグ
グラインドハウス
マカロニウェスタン
古き良き時代の名画
世界中の現代映画
を出来るだけ平均化させながら見てます
パラノーマルアクティヴィティ
レンタル出ましたね
時間と体力が追いつかないのが歯痒いです
1ヶ月休みがあればと彼女とよく話してます
いつもコメントありがとうございます
  • 2010/06/05
  • ラウ・チェンさん
はじめまして。足軽といいます。
テリー・ギリアム監督作は「フィッシャー・キング」や「12モンキーズ」が好きですがベストを挙げるなら「未来世紀ブラジル」です。
もはや悪ノリと言いたくなるようなブラックユーモアの連発にクラクラしたものです。

パッチさんのおっしゃる通り見せ場に事欠かない映画なので、DVDで繰り返し観るのもいいですね。
日本公開は'86年頃だったと思いますが…私は映画館で2回続けて観た記憶があります(笑)
そういえば当時、米国ではハッピーエンドバージョンが公開されたと雑誌か何かで眼にした記憶があります…。
  • 2010/06/05
  • 足軽手軽さん
 【ラウ・チェンさんへ】

こんばんは、ラウさん。
コメントありがとうございます。

映画の仕事をされていてもおかしくないほど詳しいですねっ。
そして映画がお好きというのがすごく伝わってきます。
私はラウさんほど多くの作品を鑑賞していませんし
知識もありませんので
コメントに対してなかなかお答えできないのが
申し訳なく思います。

映画を鑑賞するには、どうしても時間が必要ですので
時間がほしいなぁと私も思います。
1ヶ月の休みがあれば嬉しいですねっ。
ご訪問ありがとうございました(^^)
  • 2010/06/06
  • パッチさん
 【足軽手軽さんへ】

はじめまして、足軽手軽さん。
コメントありがとうございます。

テリー・ギリアム監督の作品で
この「未来世紀ブラジル」が一番お好きということで
今回紹介できてよかったです。

ほんとにブラックユーモアの連発で
クセの塊のような作品だと思います。
なので何回でも観れる作品ですねっ。
映画館で本作を鑑賞されたということで
続けて二回観られたというのもわかる気がします。

ハッピーエンドバージョンというのはどのようなものなんでしょうねっ?
ただやっぱりバッドエンドだからこそ
皮肉たっぷりの本作が魅力的なのだと思います。

ご訪問ありがとうございました(^^)
  • 2010/06/06
  • パッチさん



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